八幡製鉄事件(最大判昭和45年6月24日)
【事案】
八幡製鉄株式会社の代表取締役Yらは、同社の名で自由民主党に350万円の政治献金を行った。
同社は「鉄鋼の製造及び販売ならびにこれに付帯する事業」をその目的とすると定款に定めていたところ、同社の株主Xは、政治献金が定款所定の目的を逸脱する行為であり無効であるとして、代表取締役Yらに対して株主代表訴訟を提起し、会社に対して賠償金を支払うことを求めた。
【判旨】
会社は定款所定の目的の範囲内において権利能力を有する。「目的の範囲内」の行為とは、定款に明示された目的に限らず、その目的遂行のために直接または間接に必要な行為全てを含む。社会的実在である会社にとって政治資金の寄付を行うことは、間接的に会社の発展に資する行為である。
憲法第3章に定める国民の権利及び義務の各条項は、性質上可能な限り内国の法人にも適用される。会社は自然人同様、政治的行為をなす自由を有し、その一環として政治資金の寄付の自由も有する。
【ポイント】
◎法人の人権は、性質上可能な限り保障されると判断した部分が特に重要です。
◎外国人の人権に関するマクリーン事件(最大判昭和53年10月4日)と対比して覚えましょう。